グロービッシュ徹底解説!簡単に英語が話せるようになるのか?批判はどうなの?
グロービッシュ(Globish)とは英語の一種で「global」と「English」を合わせた造語です。ネイティブ英語(English)よりも平易な単語、平易な文法を使った世界的コミュニケーション手段、ものすごくざっくり言うと「簡単な英語」です。英語が母国語ではない人=非ネイティブの人たちのための意思疎通手段として、世界的に広まっています。
今回はこのグロービッシュについて、英語初心者が学んだほうがいいものなのか、はたまたある程度英語ができる人にも有効なのか、グロービッシュを学ぶこと・使うことに対しての反対意見はないのかなど、グロービッシュの本質に迫っていきたいと思います。
目次
グロービッシュ(Globish)って何?
グロービッシュとは何かということについては冒頭の説明がまさにそれなのですが、もう少し詳しく解説していきましょう。
グロービッシュの成り立ち
グロービッシュは、1989年にフランス人のジャン・ポール・ネリエールによって提唱されました。
IBMに勤務していた彼は国際マーケティングを専門としており、出張で日本にも来る機会がありました。そのとき彼が気づいたのは、アメリカ人などのネイティブスピーカーと話すより、彼と同じく英語を母国語としていない日本人やアジア人と話したときのほうがスムーズにコミュニケーションが取れるということ。
双方とも英語がそこまで達者でないにも関わらず、いやむしろだからこそ最低限の英語表現で会話することによって円滑に意思疎通が図れたのです。これをきっかけにグロービッシュの構想が立ち上がっていきます。日本という国がグロービッシュの成り立ちに一役買っていたわけですね。
グロービッシュの定義
グロービッシュは「簡単な英語」だと冒頭で書きましたが、それだけだとさすがに乱暴なので定義についてまとめてみたいと思います。
いろいろな解説がありますが、まとめると定義はおおむねこのようなものです。
①使用頻度の高い単語1500語とその派生形だけを使う
②文法も中学・高校レベルのシンプルな文法のみ使う
他にもいろいろルールがあるのですが、基本的に共通しているのはこの2つです。また「ルールがある」ということ自体がグロービッシュを表しているともいえるでしょう。ルールに則って使うことで、世界中の人と意思疎通ができるのがグロービッシュです。
グロービッシュのルール
それでは上の基本定義も含めたグロービッシュのルールについて解説していきましょう。
覚える英単語は1500語だけ
英語は重要単語1000語で日常会話の7割・2000語覚えていれば8割を理解できると言われています。ここにあと4000単語を覚えて6000語になったとしても理解度は9割止まり。6000語覚えるより重要な1500語を覚えたほうが効率がいいわけですね。
また1,500の基本単語から派生する3,500語を身につければ、5,000語まで発展させることができるというのもグロービッシュの考え方としてあります。派生語というのは基本の単語に否定や非○○を表す「im-」「un-」「de-」を付けたり、再放送、再構築など「再○○」を表す「re-」を付けたり、~できるという意味の「-able」を付けたりすること。
例えば「care(注意する、世話する)」という単語から「careful, carefully, carefulness, careless, carelessness, uncaring, caretaker」など多くの単語が派生されます。単純に1500語だけで全てをまかなおうというわけではないのです。
またこの1500語というのは日本では中学で習うものがほとんどです。中学程度のレベルの単語だけを使い、難解な単語は使わないのが一つ目のルールです。
シンプルな文法のみ使う
文法も単語と同じく中学程度のシンプルなもののみ使います。具体的には
「SVC(主語+動詞+補語)」
「SVO(主語+動詞+目的語)」
「SVOO(主語+動詞+目的語+目的語)」
を主体とします。未来完了進行形などといった難易度の高い英文法は使わず、能動態をベースにして受動態は極力避けるなどします。
一つの文章は短めにする
長い文章は避け、できるだけ短い文章にします。正式な文法から外れたとしても、伝わればそれでオッケーというわけです。
極端に言えば、どうしてもトイレに行きたくなったときに
「Could you please tell me where the toilet is?(トイレの場所を教えていただけませんか?)」
などと長ったらしい表現をしている暇があったら
「Toilet?」
と聞いてしまったほうが伝わるし早い、というわけです。
実際の用法については、こちらのリンク先で詳しく紹介しているので参照してください。↓↓↓
発音にこだわりすぎない
そもそもが非ネイティブの人たちでも意思疎通を可能にするためのグロービッシュ。非ネイティブ同士であれば、相手の発音も完ぺきではないと思ったほうが自然です。発音にこだわるよりはアクセント=「強く読む箇所」を重視します。
慣用句や比喩表現を使わない
慣用句や比喩表現は文学ではとても重要ですが、グロービッシュには不要です。小難しい慣用句や比喩表現は、特に国によっては理解されないことが多いため極力避けるようにします。
肯定を求める否定の質問をしない
これは何かというと「否定疑問文を使わない」ということです。否定疑問文とは「Aren’t you~?」や「Don’t you~?」など否定から始まる疑問文のこと。
例としては
通常の疑問文「Did you go to the party?(パーティーに行った?)」
↓
否定疑問文「「Didn’t you go to the party?(パーティーに行かなかったの?)」
聞きたいことは同じなのですが、まぎらわしいのでグロービッシュでは使いません。YESとNOの答え方もまぎらわしくなりますしね。
ユーモア・ジョークを使わない
仲良く会話するためにはユーモアやジョークは必要ですが、グロービッシュには不要です。国が違えば理解も異なるので、場合によっては相手を不快にしたり怒らせる可能性もあります。センシティブなものは避けるに越したことはありません。
グロービッシュは日本人向け?
そもそもグロービッシュは世界中の非ネイティブの人たちがコミュニケーションを取るためのものなので、日本人向けも何もないだろうと思うかもしれません。しかし、それでも日本人にとって有利と思う面があります。
中学英語で事足りる
日本の「話せない」英語教育に関しては昔から批判が多いところではありますが、単語や文法に関しては義務教育である程度学んでいることも事実。特にグロービッシュに関しては中学レベルの1500語で十分なため、日本の義務教育を受けていればスタート地点はクリアしているとも言えます。
6ヵ月〜1年以内で習得可能
上の項がそのまま関係しますが、中学レベルの英語ならほとんどの人が通ってきているため、グロービッシュの習得は6ヵ月〜1年くらいで可能です。ここだけは日本の義務教育に感謝してもいいかもしれません。そもそもネイティブ英語を身につけようなどと思うと、時間とコストがかかりすぎるのが問題です。ネイティブの域まで達するためには一生勉強し続けないとならないと言われるほどですからね。
国内企業も採用している
現在もかどうかは分かりませんが、HONDAも社内教育でグロービッシュを取り入れていたそうです。また楽天にいたっては社長みずから「楽天の社内公用語は英語と言うよりもグロービッシュである。」と豪語していたとか。
グロービッシュに批判や反対意見はあるのか?
さていい面だらけに見えるグロービッシュですが、以前から批判や疑問を指摘する向きもあります。それらを紹介していきましょう。
そもそも1500語では少なすぎる?
日本では中高で英語を習うと2000語くらいは学んでいるといいます。また英語の文を辞書片手に読むのにも3000語くらいは必要で、1500語程度を学んでも役に立たないという意見もあります。
しかし「グロービッシュのルール」の項でも説明したように、グロービッシュは完全に1500語のみでやり取りするわけではなく、実際はその単語から派生するものも含めると5,000語まで発展させることができます。
というわけでこの批判に関しては的外れというか、あまりグロービッシュのことを把握していない意見と言えるでしょう。
グロービッシュはネイティブには通用しない?
ネイティブの人にはグロービッシュなど通じない、会話相手もグロービッシュを使うという前提が必要になってしまうという批判もあります。しかし、グロービッシュは非ネイティブ同士が円滑にやり取りをするためのものということは説明済みです。
そもそも、「グロービッシュを身につければネイティブ並みの英語力が手に入る!」などという説明はないですし、そんなことを期待している人もそういないでしょう。あくまで最低限の英語でコミュニケーションしよう、という話なのですから、この批判も的を得ているとは言い難いようです。確かにネイティブの人に通じづらい可能性があるのは弱点と言えば弱点ですが、グロービッシュを使う本質はそこではないですからね。
グロービッシュは英語の勉強には向かない?
グロービッシュは英語の勉強、とくにインプットには向かないという意見もあります。グロービッシュの1,500語はTOEICリスニングセクションの語彙の50〜65%しか合致していないという調査結果もあるとか。英語は楽には覚えられない、やはり従来のような勉強をひたすら長い時間やらないとダメだと。楽に英語を覚えたいという願望がグロービッシュを美化しているというようなニュアンスです。
しかし同じことを繰り返すようですが、グロービッシュを学ぶというのはそもそも英語学習とは意味合いが違います。なるべく短い時間で効率的に簡単な英語で意思疎通ができるようにするのがグロービッシュの目的であって、TOEICで高得点を取りたい人や本格的にネイティブ並みの英語力を身につけたい人はそれなりの勉強をすればいい話です。
この批判に関しては、グロービッシュが簡単に高い英語力を身につけると誤解している人に向けてのものであって、そうでない人にとってはやはり少しずれた意見になっているかと思います。
グロービッシュを使った英語の学習方法については、こちらの記事も参考になるかもしれません。
まとめ
グロービッシュについて様々な観点から解説してきました。
全て読んでいただいた方にはお分かりかと思いますが、グロービッシュは英語能力を完璧にしてくれる万能ツールなどではありません。
英語を使う人たちと円滑にコミュニケーションが取れる方法です。
ちゃんとした英語を学ぶことももちろん意味のあることです。しかし、普通に意思疎通ができる英語力を身につけるために2000~3000時間かかるとしたら…
一生のうち数回の海外旅行のためだとしたら時間がかかりすぎるし、仕事ですぐに使う必要があるのだったら間に合いませんね。
グロービッシュは、いま英語が必要な人が効率よく身につけられる新しい言語。
そういう認識であれば、英語を本格的に勉強するとしても最初の取っ掛かりとしては意味が無いわけではないですし、コミュニケーションの手段としては最も即効性のあるものだということが分かるかと思います。
これから英語を学ぼうという初心者の人も、ある程度勉強中の人も、興味があれば一度触れてみてはいかがでしょうか。