イギリス英語とアメリカ英語の違いって?具体的な差異と歴史的背景とは
英語は公用語として世界中の多くの国で広く使われており、その中には第二言語としてではなく母国語として使用している国も少なくありません。
イギリス・アイルランド・アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド、その他50以上の他国が英語を主な言語として使っています。英語を母国語とする人の数は世界中でなんと4億人以上!第二言語として英語を使う人でも10億人以上にも及びます。
その中でも大きく分けるとアメリカ英語とイギリス英語の2つになることはよく知られているところ。しかし実際どのように違うのかをちゃんと把握している人は少ないのではないでしょうか。
今回はアメリカ英語とイギリス英語の違いにフォーカス。実際にそれぞれの英語を使う人とコミュニケーションするときに困らないよう、しっかり把握しておきましょう。
目次
それぞれの特徴と使う国
世界で英語を使う国は多いですが、多くの場合アメリカ英語・イギリス英語どちらかがベースになっています。下記にそれぞれの特徴と使う国の一例を挙げてみます。
イギリス英語の特徴と使う国
イギリス英語は俗に「クイーンズイングリッシュ」と呼ばれるように、上流階級・貴族・知識人が使うというようなイメージがあります。実際、アメリカ英語と比べると文法もきっちりしており、発音も比較的ローマ字通りに発音することが多いです。また丁寧で礼儀正しい表現を好むイメージもあります。
ただやはりというか、同じイギリス内でも地域によって違いや訛りががあります。東ロンドンの労働者階級の「コックニーアクセント」、北アイルランドとアイルランド共和国の「アイリッシュアクセント」などです。
またアメリカ英語は同じものを表すときに同じ単語を繰り返し使いますが、イギリス英語ではバリエーションに富んだ言い回しが好まれるようです。イギリス英語を話す人はそれを面白いと感じ、バリエーションによって相手の教養を測っている部分があります。日本語でも同じようなことがあるのはお分かりになりますでしょうか。
イギリス英語を使うのは、かつてイギリスの植民地であった国が中心です。背景を聞くと、なるほどと思いますよね。以下がその例です。
イギリス | アイルランド |
オーストラリア | シンガポール |
インド | マレーシア |
ニュージーランド | 香港 |
南アフリカ | 西アフリカ |
アメリカ英語の特徴と使う国
アメリカ英語はイギリス英語と比べてくだけた表現が多く、何かと省略することを好む傾向があります。英語が母国語でない移民が多かったのも背景にあるかもしれません。
アメリカ英語を使う「国の数」はイギリス英語ほど多くはありません。しかし「使う人の数」で見ると、アメリカ英語を使う人の方が圧倒的に数が多いです。
アメリカ | カナダ |
フィリピン | プエルトリコ |
またご存じのように、日本では英語教育にアメリカ英語が使われ、イギリス英語よりなじみ深くなっています。カナダはアメリカの方に入れましたが、実際はイギリス英語とアメリカ英語が半々くらいのようです。
イギリス英語とアメリカ英語の違いはどのように生まれたか
もともとイギリスがアメリカを植民地としたところからアメリカの歴史が始まるので、双方とも英語を使うのは当然。とはいえ距離も離れていますし、アメリカにはどんどん多国語を使う移民が入ってくることから自然と変容していったのも理解できます。
ではどうやって違いが生まれていったか。それを知らずとも違いを理解することはできますが、背景を知っていた方がより深く理解が及ぶはずです。一つづつ見ていきましょう。
アメリカの方が古い英語を使う
アメリカの方が古い英語を使うというと不思議に感じるかもしれませんが、答えは簡単。アメリカに英語が持ち込まれたあと、本家イギリスの方の英語が変化していったということなのです。
イギリスの裕福な南部都市では、上流階級の人々が他と区別をつけるために話し方を変えていきました。具体的にはローティック・スピーチ(rを発音する話し方)から容認発音(Received Pronunciation)と呼ばれる話し方へ変えていったのです。
これを真似する人が増え、次第に南部全土へと広まっていきました。そのため、イギリスといっても南部以外ではアメリカと同様ローティック・スピーチが訛りとして残っている地域もあります。基本的にはロンドンあたりの言葉がこの新しいイギリス英語と思っておけばよいかと思います。
イギリス英語は意外にフランス語の影響を受けている
ノルマン朝の初代イングランド王であるウィリアム1世は、訛りの強いノルマンディー地方の方言を使っていました。これが現代のイギリス英語の元になったとも言われています。また1700年代にはイギリスでフレンチスタイルの言葉やスペル使用が流行しました。この頃にはすでにアメリカは独自の文化圏になっていたためこの流行が伝わることはなく、イギリス英語独自のスタイルとなります。このようにイギリス英語はフランス語に近い部分があるのです。
辞書の編纂もそもそも違う
イギリスの英語辞書編纂者はロンドンの学者ですが、アメリカの英語辞書編纂者はノア・ウェブスターというアメリカ人です。ウェブスターはアメリカ英語のスペルを単純化し、イギリス英語のスペルと差をつけようとしました。独立精神が表れているなどとも言われますが、そりゃイギリス英語とアメリカ英語が変わってくるわけですね。
具体的には「colour」→「color」や「honour」→「honor」など、また語尾の「-ise」を「-ize」にしたりなど独自のポリシーによって変えられています。
イギリス英語とアメリカ英語の具体的な違い
それではいよいよ、イギリス英語とアメリカ英語の具体的な違いについて紹介していきたいと思います。これを知っておくことはビジネスシーンでも、また海外旅行などでも役に立つはずです。
①発音の違い
まずはイギリス英語とアメリカ英語の発音の違いです。よく引き合いに出される単語が「can」。アメリカでは「キャン」と発音しますが、イギリスでは「カン」に近い感じで発音します。「can’t」もアメリカでは「キャーントゥ」、イギリスでは「カーントゥ」に近い感じになりますね。
このような発音の違いについては一定のルールがあるので、順に見ていきましょう。
rの発音
上の方でも説明したように、イギリスではローティック・スピーチ(rを発音する話し方)から容認発音(Received Pronunciation)と呼ばれる話し方へ変わっていきました。したがってイギリス英語では、後に子音が続く場合以外は発音が控えめになるか発音されなくなっています。
一方アメリカ英語では、「R」を舌を後ろに巻くようにして強調しながら発音します。日本人が苦手とされ、苦しめられるアレですね。そのため、イギリス英語の方が聞き取りやすいといった傾向はあります。
tの発音
はじき音(Flapping=フラッピング)という言葉があります。母音に挟まれた破裂音の「t」と「d」の音がやわらかくなって変化することで、「フラップT」「フラップD」などと呼ばれたりします。(下記リンク参照)
このフラッピングがイギリス英語ではほとんど起こらず「t」の音をはっきりと発音します。
water(ウォーター) | (米)ウォーラー | (英)ウォーター |
party(パーティー) | (米)パーリー | (英)パーティー |
Lettuce(レタス ※野菜) | (米)レーダス、レーラス | (英)レタス、レトゥス |
aの発音
アメリカ英語ではaは「ア」と「エ」の中間のような発音になることが多いですが、イギリス英語では「ア」としっかり発音します。したがってトマトはアメリカでは「トメィト」に近い発音になり、イギリスでは「トマァト」に近い発音となります。冒頭で話したcanもそうですね。
②スペルの違い
アメリカとイギリスではスペルの違いも存在します。上の方で話したように辞書編集の際にあえておこなった部分もあるようですね。
「-er」が「-re」になるパターン
センター | (米)Center | (英)Centre |
シアター | (米)Theater | (英)Theatre |
リットル | (米)Liter | (英)Litre |
メートル | (米)Meter | (英)Metre |
ファイバー | (米)Fiber | (英)Fibre |
「-or」が「-our」になるパターン
カラー | (米)Color | (英)Colour |
フレーバー | (米)Flavor | (英)Flavour |
リットル | (米)Liter | (英)Litre |
ユーモア | (米)Humor | (英)Humour |
ハーバー | (米)Harbor | (英)Harbour |
フェイバリット | (米)favorite | (英)fovourite |
ネイバー(隣人) | (米)neighbor | (英)neighbour |
オーナー(名誉) | (米)honor | (英)honour |
「-ze(yze)」が「-se(yse)」になるパターン
オーガナイズ | (米)Organize | (英)Organise |
アナライズ | (米)analyze | (英)analyse |
リアライズ | (米)Realize | (英)Realise |
アポロジャイズ(謝る) | (米)Apologize | (英)Apologise |
メモライズ | (米)Memorize | (英)Memorise |
ファイナライズ | (米)finalize | (英)finalise |
「log」が「logue」になるパターン
アナログ | (米)analog | (英)analogue |
ダイアログ | (米)dialog | (英)dialogue |
カタログ | (米)catalog | (英)catalogue |
「-se」が「-ce」になるパターン
ライセンス | (米)license | (英)licence |
オフェンス(違反・反則) | (米)offense | (英)offence |
その他
プログラム | (米)program | (英)programme |
③文法の違い
文法にも違いが見られます。イギリス英語を話す人は、文中に「Have」を入れるのが大好きなようです。もっと言うと、現在完了形(have +過去分子)が好きな傾向があります。
シャワーを浴びる | (米)take a shower | (英)have a shower |
私は昨日鍵を失くした | (米)I lost my key yesterday. | (英)I have lost my key. |
④単語の違い
同じものを表す単語でも全く違う言い方をする例があります。サッカーのことを英語で言うとき、イギリス人は「Soccer」ではなく「Football」と言うことに強いこだわりを持つ人が多いようです。
他にもファッション業界でよく話題になる表現で「秋」が「(米)Fall」に対し「(英)Autumn」だったり、ズボンが「(米)Pants/Slacks」に対し「(英)Trousers」だったり…
他にも(建物としての)アパートを表すのが「(米)apartment」に対し「(英)flat」とか、消しゴムが「(米)Eraser」に対し「(英)Rubber」だったりと枚挙にいとまがないので、興味がある人は調べてみてください。
まとめ
イギリス英語とアメリカ英語にはその他にも時間表現が違ったり、1階・2階などの階数を表す表現が違ったり、よく使う単語でも全く違う言い方をすることが多くあります。細かい記述の違いや文法の違いは書ききれないほどです。
海外の人とビジネスをしたり、あるいは旅行先で出会ったり、日本でも道を尋ねられたりしたときに相手がアメリカ英語を話しているとは限りません。
すべてを覚える必要は無いかもしれませんが、相手の人と会話がかみ合わなく「?」となったときは「もしかしたら!」と疑ってみるのも手です。
ちなみに相手がもしイギリス人であれば、その違いを把握していて丁寧に(嫌味っぽく?)教えてくれる可能性が高いとか高くないとか。しかしもちろん相手がイギリス人でない場合の方が多いでしょうから、あまり期待はしない方がいいかもしれませんね。(笑)