英語学習法のひとつ「ディクテーション」とは何か?効果と方法について解説!
英語学習に関する様々なTIPSをお届けしている当サイトですが、今回は英語学習法のひとつ「ディクテーション」をご紹介します。
あまり耳慣れないという方もいらっしゃるかもしれませんが、ディクテーションはリスニング力を強化するための王道トレーニングです。またそれに留まらず、英語の4技能とも言われている総合的な英語力の向上も期待できます。
ディクテーションはヨーロッパでの外国語学習では非常に重要視され、授業や試験でもよく行われているそうです。今回はその効果や、やり方を詳しく解説していきます。
正しく取り入れることができれば英語学習の効果が飛躍的に高まるディクテーション。知っておいて損はないトレーニングです。
目次
ディクテーションとはどんな学習法か?
まずディクテーションとはどんな学習法かを説明していきます。dictationとは「口述の書き取り」という意味で、dictateが動詞形で「書き取らせる・口述する」という意味になります。
その名の通り、耳で聞いた英語の音声を一言一句書き取るというのがディクテーションという学習法です。ちょっとオールドスタイルなトレーニングのように聞こえるかもしれませんが、冒頭でも話したように英語の4技能を伸ばすのに非常に効果的で、ネイティブも小学生のときに学校で行う練習になります。
何度も聞き直して一言一句書き取らなくてはならないため、リスニング力が強化されるのはすぐ分かるかと思います。しかしそれだけではなく、単語の綴りや発音・文章の分析や文を組み立てる能力・単語や文法の知識の自動化を試すのにも効果的で、それらを強化できるトレーニング方法でもあります。
「やったことはある」という人もいらっしゃるかもしれませんが、基本的に昔は日本の学校教育においてほとんど行われてこなかった学習法です。最近ではようやく聞き流しでは効果が薄いことが理解され、高校などではディクテーションが取り入れられているようですね。
ディクテーションを行うことで期待できる効果
上でも少し触れましたが、ここではディクテーションを行うことでこんな効果が期待できるという点について説明していきましょう。
リスニング力の向上
言うまでもない効果ですが、全部聞き取れるまで何度も何度も繰り返し聞くので聞き流しをすることが無くなります。また聞き取った文字を書き取るということも大きいポイント。これにより音と文字を一致させられるようになるため、今まで聞き取れなかった音を目でも耳でも理解できるようになるのです。
文脈から推測する力の向上
何回聞いても聞き取れない部分というのはあるものです。同じ発音で違う単語もありますし、聞こえるか聞こえないかぐらいにしか発音されない単語(または単語の一部)もあります。
これは英語だけでなく、日本語で会話しているときもそうです。何も全ての日本人同士が相手の言っていることを100%聞き取っているわけではありません。しかし聞き取れなかった部分も、会話の流れや文脈で推測して補っています。この「推測する力」というのは非常に重要で、「英会話」をするうえでも役に立つものです。
自分の弱点と課題を把握できる
聞き取れなかった部分が明確になるので、自分の弱点が分かります。弱点が分かればそれを克服するだけです。そこで「課題」が分かります。聞き取れなかった原因としては、覚えている単語の数が足りないとか、正確な発音を知らないなどが考えられるでしょう。
ディクテーションの最も大きなメリットは、この自分の弱点を見つけることだと言っても過言ではありません。
ライティング能力もアップする
聞いた先から文章を書き留めていくので、当然ライティング能力にも影響を与えます。スペリングを覚えられ、英文を組み立てる能力が鍛えられ、書き取った文章が正しいか分析する力も身につきます。
ディクテーションの種類
ディクテーションにも2種類あります。全文ディクテーションと、穴埋めディクテーションです。また全文ディクテーションも、さらに2種類に分けられます。
穴埋めディクテーション
穴埋めディクテーションとは、下記のようなものです。
Let’s see ( ) they have in the ( ).
カッコの中の音声を聞き取って穴埋めするわけですね。当然、全文を聞き取るディクテーションより簡単です。すべて聞き取るのがまだ難しいと感じた場合は、穴埋めディクテーションからトライしてみるのもいいでしょう。
全文ディクテーション
こちらはもうそのまま、聞いた音声をすべて書き取る方法です。ひとつポイントとしては、スペルが長い単語の書き取りなどにはこだわり過ぎないことです。
例えば「responsibility」のように長い単語をそのまま書き取っていると、書いているうちに音声がどんどん先に進んでいってしまいますよね。正しいスペリングを身につけるのも大事ですが、要は自分が聞き取ったことが分かればいいので、下記のように略して書いてしまうのもひとつの方法です。
Monday → Mon
tomorrow → tmr
finish → fin
by the way → btw
こういった略し方は、実際の英語でのメールやSNSの書き込みなどにも使われていますよね。結局聞き取れているかが重要なので、後から自分で見直したときに何の単語なのか分かればいいのです(もちろん自分でも「何じゃこりゃ?」と分からなくなるような略し方はNGです)。
さて、全文ディクテーションにも2種類のやり方があるので紹介しましょう。
ボトムアップ・ディクテーション
ボトムアップ・ディクテーションは、事前にテキストを読んだりせずにいきなりディクテーションを行う方法です。負荷は高いですが、ディクテーションで得られる全ての効果が期待できます。しかし十分な英語力が無いまま行っても逆効果。まだ基礎力が不足していると感じるなら、下記のトップダウン・ディクテーションを行う方がいいかもしれません。
トップダウン・ディクテーション
トップダウン・ディクテーションは上記とは逆に、あらかじめテキストを読んだり単語の意味を調べたりして使用する英文の内容を学習しておき、仕上げとしてディクテーションを行う方法です。
こちらの方法では、いかに事前に英文の内容を理解しておくかがポイントとなり、それによってディクテーションの効果も高まります。
ディクテーションの具体的なやり方
前項でも説明したようにディクテーションにも種類がありますが、まずは最も一般的と思われるやり方をご紹介します。
①音声とスクリプトを用意する
②スクリプトを見ずに音声を聞く
③ディクテーションをする(数回繰り返す)
④スクリプトを見ずに自己チェックをする
⑤スクリプトを見て答え合わせ&分析する
①音声とスクリプトを用意する
まずは教材を用意します。自分のレベルに合った、難しすぎないものを選ぶのが重要です。また長すぎる英文も負荷が高すぎて嫌になってしまう可能性があるので、避けた方がいいでしょう。音声と文章がセットになっているものがベスト(意外に少ないので注意)。また自分が興味ある話題の文章の方がモチベーションが上がるのでおすすめです。
人によっては、映画やドラマなどでディクテーションを行うのをお勧めしているのを聞くことがあります。しかしこれはあまり真似しない方がいいでしょう。単純に難しいのと、よっぽど基礎力が無いと聞き取れない部分だらけで挫折してしまう可能性大だからです。
②スクリプトを見ずに音声を聞く
スクリプトを見ずに音声を聞きます。絶対に全く見てはならぬというわけではありませんが、極力見ないようにして音声に集中しましょう。メモも取りません。音声だけで、全体の大まかな内容を理解するよう努めましょう。途中で止めないことも重要です。全ての単語が聞き取れなくても構いません。大体の内容を把握さえしておけば、ディクテーション中に聞き取れなかった箇所を推測しやすくなるので、音声自体のイメージをつかむことに注力しましょう。
③ディクテーションをする
いよいよディクテーションを行っていきます。最初は1文ごとに止めて、聞こえた音声を書き取りましょう。ポイントは、文の途中や単語ごとに音声を止めないようにすることです。聞き取れなかったら少し巻き戻してもう一度聞き、書き取ります。最大10回程度を目安に聞き取り・書き取りを繰り返しましょう。そこで一言一句書き取れなかったらその部分は諦めましょう。それ以上やっても聞き取れるようになる可能性は少ないからです。
④スクリプトを見ずに自己チェックをする
これ以上聞き取れないというところまで来たら、まずはスクリプトを見ずに書き取った文章を自己チェックしましょう。スペルミスや冠詞(a / an / the)・前置詞(at / on / forなど)・複数形のs・他動詞の目的語の抜け落ちなどは自分でもチェックできるはずです。
例えば自分が「He plays tennis yesterday.」と書き取っていたとします。ここで「yesterdayなのだからplaysではなくplayedなのでは?」という予測がつきます。
また聞き取れなかった部分がある場合は、それ自体が穴埋めディクテーションの問題のようになっているはずです。そこを文脈や前後の単語などから推測してみましょう。これによって英会話で重要な「推測する力」も養うことができます。
⑤スクリプトを見て答え合わせ&分析する
スクリプトを見て、自分の書き取った文章と比べて答え合わせをします。単語やフレーズ、スペルミス・大文字・小文字などの細かい部分までチェックしましょう。
そしてこの後が重要なのですが、自分がなぜ聞き取れなかったかの原因を分析します。
●単語・熟語・フレーズを知らなかった
→語彙・文法の知識を増やす必要がある
●知っている単語だったが(スクリプトを読めば理解できる)、発音が自分の認識と違った
→発音の知識を増やす必要がある
●スピードに追いつけなかった
→英語のナチュラルスピードに慣れる必要がある
●文法知識が曖昧だった
→•英文法の知識を増やす必要がある
ほかにも…
●冠詞、複数形のs、前置詞等の抜け落ち
●リエゾン(音のつながり)などの音の変化が聞き取れなかった
などなど…
原因が分かれば対策としてやるべきことが分かる。これが、ディクテーションが英語の4技能すべての向上に役立つと言われる最大のポイントです。
ただそもそも単語や文法の知識が圧倒的に不足しているならそちらの学習をまず行うべきですし、ディクテーションを行うとしても自分の知らない単語がほとんどないような教材を選択するべきです。
まとめ
今回はディクテーションの効果と行う際のポイントについて解説してきましたが、人によっては「ディクテーションなどやっても意味がない」など言われることもあるようです。
しかし、ディクテーションは正しいやり方で行えば必ず効果があると断言してしまってもいいでしょう。逆に言うと、正しくないやり方でやると確かに効果が薄く時間の無駄になってしまう可能性もあります。
ある程度の英語力がついたら正しいやり方でディクテーションを行う。ディクテーションに慣れてきたら、オーバーラッピングやシャドーイングでさらに発音の練習をする。そういった位置づけで行うのがおすすめです。
オーバーラッピングやシャドーイングについては下記記事を参照してください。
また基本的な単語や文法の知識が不足していると感じている人は、まずは中学英語をマスターするところから始めた方がよいでしょう。