英語のアクセント入門。より通じやすい英語をマスターするにはアクセントが肝。
英会話学習を志す人であれば誰しも、ネイティブのように綺麗で流暢な英語を話せるようになりたいと夢見たことがあるはずです。(実際に綺麗な英語とは何か、という問題は置いておいて)
一方で、TOEICの点数が高くても英語が話せない日本人が多い、という現実にも直面します。とにかく日本人は発音と実際に話すことが苦手な人が多いようです。理由はいくつかあるのですが…(それについては下記記事を参照してみてください)
その中でも、意外と見逃されがちなのが英語のアクセントについてです。たかがアクセントと侮るなかれ、アクセントが違うだけでネイティブに全く通じないなんてこともあるのです。
日本語でも「橋」「箸」「端」のように同じ発音をする単語でも「はし」「はし」のようにアクセントをつける場所によって意味が変わってくる場合がありますが、英語のアクセントはまたそれとは違った概念。英語のもつ独特のリズムにもつながり、相手に伝わるかどうかの重要な要素なのです。
今回は英語のアクセントの重要性と効果的な学習法について考えていきましょう。
目次
アクセントとはそもそも何か
「アクセント(accent)」は英語圏では「ストレス(stress)」とも呼ばれますが、従来の日本の英語教育ではあまり触れられてこなかった部分です。センター試験で少し出てくる程度で、あまり本格的に習った・勉強したという人は少ないでしょう。また先にお話ししたように、英語のアクセントは日本語のそれとは概念が異なっています。
「単語のどの部分を強く言うかってことでしょ?」という方、まぁ間違ってはいないのですが本質的な説明にはなっていないかもしれません。
そもそも、英語のアクセントという場合「単語レベルのアクセント」と「文章レベルのアクセント」が存在します。今回の記事では主に単語レベルのアクセントについて解説しますが、ここではそれぞれについて説明していきましょう。
単語レベルでのアクセント
単語レベルで言うところの「アクセント」は、英単語の特定の音節を強く発音して強弱を付けること。「どの部分を強く言うか」というのも間違ってはいないのですが、もっと正確には「どの部分を強く言ってどの部分を弱く言うか」ということになります。英語学習で「アクセント」という言葉を使うときには、こちらの「単語レベルのアクセント」の話をしていることがほとんどです。
英単語のアクセントの場所は辞書で調べることができ、義務教育の過程で誰しも一度は見たことがあるでしょう。ご存じのように、発音記号のアクセントの置かれる音節に「′」という記号がついているのがそれです。
例えば「English」という単語であれば「/íŋglɪʃ/」と表記し、最初の音節「イ」にアクセントが置かれ強く発音されるのが分かりますね。「/kíndɚgὰɚtn/」のように2つアクセントがある単語もあります。
また第1アクセントには「é」のように右上に伸びる符号、第2アクセントには「è」のように左上に伸びる符号が使われることもルールのひとつです。
文章レベルでのアクセント
アクセントは単語レベルだけではなく、文章レベルでも使われます。イントネーションとも呼ばれるものです。例えば「I don’t think so.」という文章があるとして、ほとんどの場合でこの文章の最も重要なポイントは「think」という単語のはずです。
なので、「think」を強く、その他を弱く低く発音することによって「この文章で一番言いたいことはここだよ」というのを表すことができます。基本的には文末の単語に一番強いアクセントを置くことが多いです(文末が「so」や「her」「him」など代名詞の場合はその前の単語)。
さらに、「think」以外にアクセントを置くことによってニュアンスを変えることもできます。
「I」にアクセントを置けば「私はそう思わない」のように「私は」ということを強調することになりますし、「そう思わない」という否定の意味を強調したければ「don’t」にアクセントを置くことで表現できます。
このようにアクセントの位置によって伝えたいニュアンスを使い分けることができる一方で、使い方を間違えると相手に意図とは真逆の意味で取られたりしかねないので注意が必要です。
ですが、文章レベルのアクセントも「より英語らしいリズムを伴ったスピーキング」ができるようになるためには非常に重要なことです。
英語のアクセントの特徴
基本概念が理解できたところで、英語のアクセントの特徴について知っていきましょう。英語のアクセントには日本語のそれとは違う特徴がいろいろあります。
日本語と英語のアクセントの違い
日本語と英語では、アクセントというもの自体の意味合いがまず異なってきます。具体的には日本語のアクセントは「高さアクセント」と呼ばれるように高低で、英語のアクセントは「強さアクセント」と呼ばれるように強弱で表すと思ってください。
冒頭で述べた例では、日本語のアクセントとして「橋」「箸」「端」などを「はし」「はし」のようにアクセントで区別しますが、この場合のアクセントは「強く言う」というよりは音程(ピッチ)を高くするという方が正確です(音程とはドレミファソラシドのような音の高さのことです)。
一方、英語でアクセントを付ける場合は音の高さは変えず単純に強く発音します。英語と日本語では同じアクセントでもこれだけの違いがあるので、日本人が日本語と同じニュアンスで英語にアクセントをつけようとすると不自然な英語に聴こえる、ということが起こるわけです。
英語のアクセントは音節と母音に関係している
英語のアクセントは、例外は多いものの一定のルールに則って決まっています。そこに大きく関係するのが音節と母音です。
音節とは、1つの単語を分解できる最小単位のこと。例えば、1音節の単語とは「sit」「take」など「これ以上は分解できない、1つの音として聞こえる」単語です。
これが「culture」になると、ネイティブは「2つの音が合体している」ように聞こえます。「cul」と「ture」に分けることができる、と考えるわけです。これが2音節の単語になります。同様に3音節、4音節の単語も数多く存在するのは言うまでもありません。
そしてアクセントはどこかの音節の母音の上にあるというのもルールです。例えば「communicate」という単語は「com-mu-ni-cate」と4音節に分けられますが、アクセントはこの4つの中のどれかの母音に置かれることになります。実際には「mu」の上の母音「u」の部分にアクセントが置かれます。
英語のアクセントのルール
英語のアクセントには、ある程度のルールがあります。文法や発音ルールと同じくどうしても例外というものが存在するので、これさえ知っておけば100%大丈夫ということは残念ながらないのですが、知っておくとかなり役に立つのもアクセントのルールです。
全てを紹介するのはスペースの都合上不可能ですが、知っておくだけで便利なものを優先してご紹介しましょう。
音節が3つまでの英単語
音節が3つまでの英単語は、基本的に第1音節にアクセントが来ることが多いです。
take(téɪk)
short(ʃˈɔɚt)
camera(kˈæm(ə)rə)
接頭語が付いている単語の場合
接頭語が付いている単語の場合、基本的にその直後にアクセントが来ることが多いです。
(接頭語とは、下記の例で言うとそれぞれ「im-」「res-」「to-」のことです。)
important(ɪmpˈɔɚtnt)
responsible(rɪspάnsəbl)
toward(t(w)ˈɔɚd)
ただし例外として一部、アクセントを置く接頭語もあるので注意してください。
接尾語が付いている単語の場合
接尾語が付いている単語の場合、接尾語の直前にアクセントがある場合が多いです。
(接尾語とは、下記の例だと「-ity」「-tion」「-ble」のことです)
possibility(pὰsəbíləṭi)
information(ìnfɚméɪʃən)
orkable(wˈɚːkəbl)
母音が2つ続いたら、その1つ目にアクセント
母音が2つ続いたら、その1つ目にアクセントが来る場合が多いです。例としては下記のようなものです。
agree(əgríː)
between(bitwíːn)
employee(implɔ́iiː)
同じ子音が連続で続く単語の場合
同じ子音が母音の前に2つ続く場合、その音節にアクセントを置く場合が多いです。
addition(ədíʃən)
appointment(əpˈɔɪntmənt)
irregular(ìrégjʊlɚ)
動詞と名詞でアクセントが違う単語の場合
英語には、同じ単語なのに動詞として使う場合と名詞として使う場合とではアクセントの位置が異なるという、やっかいな単語も存在します。その場合は「名詞は前にアクセント・動詞は後ろにアクセント」の場合が多いです。
decrease(名詞:díːkriːs)(動詞:dìːkríːs)
increase(名詞:ínkriːs)(動詞:inkríːs)
address(名詞:ǽdres) (動詞:ədrés)
単語の最後の母音を発音する場合
単語の最後の母音が発音されないことが多いのも英語の特徴です。「make」や「take」などは最後の「e」を発音しませんよね。これが日本語だと必ず最後の母音は発音するので、例えば「shinjuku(新宿)」だと最後の「u」は発音します。
しかし英語でも最後の母音を発音する単語もあります。その場合だとアクセントはその一つ前の母音に置かれることが多いです。
banana(bənǽnə)
tobacco(təbǽkou)
potato(pətéitou)
名詞と名詞の複合語の場合
2つ以上の名詞を組み合わせた単語(複合名詞)というものがあります。その場合は前に来る単語の音節にアクセントが置かれることが多いです。
bookstore(búkstɔ̀ːr)
girlfriend(gˈɚːlfrènd)
football(fˈʊtb`ɔːl)
まとめ
英語のアクセントについてお話してきましたが、重要性は理解していただけたでしょうか。単語にもよりますが、アクセントが違うとネイティブには本当に通じません。ネイティブの人は、発音もそうですがアクセントが違うと英語として聞き取ることができないのです。また通じないだけならともかく、伝えたいことと逆の意図で受け取られる場合すらあるので場合によってはトラブルの原因にすらなってしまいます。
しかし、ここまで言ってきて何ですが、あまりアクセントを恐れすぎないことも重要です。「言ってること違うじゃん!」と思うかもしれませんが、訛りというのはどの人でも多かれ少なかれ持っているもの。ロシア訛り・中国訛りなどもそうですし、アメリカ英語とイギリス英語も違いますし、同じアメリカ内でも北部と南部では違う訛りがあります。ロンドンとイギリス北部の街ですら、現地の人が気づくほど違うのです。
相手に通じなかったり誤解を与えない正しいアクセントは重要ですが、「きれいなアクセントで話さないと」と焦ってうまく話せなくなってしまったりするのは本末転倒です。その人なりのアクセントや訛りはあって当然。あとはなるべく相手にちゃんと伝わるかどうか、アクセントを常に意識しながら話せるかどうかが肝となってくるでしょう。