英語のリエゾンとは何?勉強する必要はあるの?知ってないと損する知識
英語の勉強方法を探すうえで、「リエゾン」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないかと思います。しかし、言葉だけは聞いたことがあってもどんなものかを正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。
今回は、英語のリエゾンとはどんなものか、また英語学習にどのように取り入れていけばいいのかについて解説していきたいと思います。
目次
英語のリエゾンの基本概念について
まずは、英語のリエゾンとは何か?というお話。リエゾン(Liaison)とは、フランス語で「連結」を意味する語です。意外にも英語じゃないんですね。もともと音声学の用語としてはフランス語で起こる音のつながり、フランス語における音声上の特性を指す言葉です。通常は発音しない語尾の子音が、次の語頭の母音とつながって発音されることをいいます。
これが一般的に「英語のリエゾン」のように言われる場合は、英語の文章中で特定の単語の末尾の音と直後の単語の先頭の音が連結して違う発音になることを意味することが多いです。
ここまで読んでいただいた熱心な英語学習者の方の中には、「あれ?それってあれのことじゃ…」と思い当たるかもしれませんね。そうです、リンキングです。
ここで、「何だ、リエゾンってリンキングのことか~」と思った人、それは間違ってはいないのですが誤解を招く恐れがあります。
まず、最初に説明したようにリエゾンはフランス語。英語圏では、全く使われないわけではないものの、やはりlinking(リンキング)の方が一般的です。
「じゃあリエゾンなんて呼ばずにリンキングでいいじゃん!」と思いましたか?ところが日本の英語音声学では、必ずしもリエゾン=リンキングではなく、リンキングを含む音声変化の総称として使われることがあります。
この音声変化には少なくても3種類、細かく分けると連結・脱落・同化・はじき音・弱形の5つの種類があります。
今回は、この5種類すべてを含んだものをリエゾンとして説明していきます。5種類のうち連結(リンキング)と脱落(リダクション)については既に別の記事で解説しているので、そちらを参照してください。
英語のリエゾンの必要性
上のリンク先でリンキングやリダクションについての解説を読めば分かりますが、リエゾンを理解するとリスニング力やスピーキング力がアップします。リエゾンは日本語ではあまり起こらない現象のため(全く無いわけではありません)、聞き慣れていないので苦手なのです。そこを理解すれば脳が英語の音の変化を正しく処理できるようになり、スムーズに聞き取れるようになります。また分かるかと思いますが、何よりネイティブっぽくてかっこいい発音ができるのもうれしい点です。
じゃあそこまでネイティブ並の発音を身につける必要がなければ気にしなくていいよね!と思ったあなた、大間違いです。リエゾンを身につけていないと、相手に通じるのもままならない場合があるからです。
まず、ネイティブ・スピーカーにとってはリエゾンさせる方が自然で、リエゾンさせない方が不自然です。そして、リエゾンすると必ずしも発音記号に忠実でなくなります。スペルと発音が完全に違うものになることも少なくありません。
ということは、日本人が「ゆっくりひとつひとつの単語を正確に発音すれば通じるだろう」と思うのは大間違いだということです。良かれと思って一単語づつスペルや発音記号どおりに発音すると、逆にネイティブの人には聞き取れず、意味が分からなくなってしまうのです。リエゾンの重要性が少しは分かっていただけたでしょうか?
当然、我流でそれっぽく言ってみただけのリエゾンも全く通じないのでご注意あれ。
同化(Assimilation=アシミレーション)とは何か
リンキングとリダクションについては上部のリンク先で解説しているので、それ以外の要素を説明していきましょう。まずは同化(Assimilation)についてです。
同化(アシミレーション)は、2つの単語がつながるという意味ではリンキングと同じなのですが、前後の子音が互いに影響し合い異なる音に変化するという違いがあります。どういうことかというと、音がつながったときにスペルとは違う音になるのです。リンキングの場合は音は変化するものの、スペルと違う音にはなりません。
これは「s」「t」「d」と「y」の組み合わせと覚えると分かりやすいです。
「s+y」→ miss you(ミシュー) | missの最後の「ス」が「シュ」に変化 |
「s+y」→ was your(ワジュア) | wasの最後の「ズ」が「ジュ」に変化 |
「t+y」→ got you(ゴッチュー) | gotの最後の「トゥ」が「チュ」に変化 |
「t+y」→ about you(アバウチュー) | aboutの最後の「トゥ」が「チュ」に変化 |
「d+y」→ need you(ニーヂュー) | needの最後の「ドゥ」が「ヂュ」に変化 |
「d+y」→ could you(クッヂュー) | needの最後の「ドゥ」が「ヂュ」に変化 |
はじき音(Flapping=フラッピング)とは何か
はじき音(フラッピング)とは、母音に挟まれた破裂音の「t」と「d」の音がやわらかくなり変化すること。「フラップT」「フラップD」などと呼ばれます。日本語で言う「ラ」行の音、もしくは「d」の音、もっと正確に言うとラ行とdの間のような音に変化します。
「アナと雪の女王」の主題歌を思い出してください。
「Let it go」をみんな「レリゴー」と歌いませんか?アレです!
フラッピングが起こる条件
フラッピングが起こる条件は2つあり、この条件下でしかフラッピングは起こりません。
①前後を母音に挟まれていること
②Tの直前の母音にストレス(アクセント)があること
この条件下でのみ、フラッピングが起こります。
例えばフラッピングの代表例である
water(ウォーター) → ウォーラー
を見ると、tの前のaにストレス(アクセント、強調)があり、かつtはaとeに挟まれていますよね。このような場合にフラッピングが起こります。
「hotel」という単語はどうでしょうか。tがoとeに挟まれていますが、ストレスの位置がeのため(tの直前ではない)、フラッピングは起こりません。
代表的なフラッピングの例
以下に代表的なフラッピングの例を挙げてみます。
party(パーティー) → | パーリー |
better(ベター) → | ベラー |
letter(レター) → | レラー |
ladder(ラダー) → | ララー |
medal(メダル) → | メル |
little(リトゥル) → | リル |
middle(ミドゥル) → | ミル |
Check it out!(チェック イットゥ アウトゥ ) → | チェッケラゥトゥ |
Not at all (ナットゥ アットゥ オール) → | ノラロー |
Shut up(シャットゥ アップ ) → | シャラップ |
get up(ゲットゥ アップ) → | ゲラップ |
get away(ゲットゥ アウェイ ) → | ゲラウェイ |
フラッピングはアメリカ英語だけ
面白いのは、このフラッピングという現象が起こるのはアメリカ英語だけで、イギリス英語では起こらないということ。アメリカ・カナダ・オーストラリアではフラッピングが起こりますが、イギリスでは起こらないのです。イギリス英語は「T」を強く発音すると言われることがありますが、フラップTが起こらないというのも理由の一つだそうです。
特殊な口語表現について
どの条件にも当てはまらない、特殊な口語表現もあります。これはもう決まりきった表現というか、日常会話でよく出てくる表現なので複数の語が大幅に省略されてほとんど一体化してしまっている状態です。
want to → wanna | ウォントゥ → ワナ |
going to → gonna | ゴゥイングトゥ → ガナ |
got to → gotta | ゴット トゥ → ガタ |
これらの表現は基本的にはカジュアルですが、ビジネスシーンなどで使われないわけではありません。ですが俗っぽい表現ではありますので、書き言葉では通常は使いません。
リエゾンの練習方法~どう練習したらいいのか
リエゾンの種類や重要性については十分に理解ができたでしょうか。では、ただでさえリエゾンが苦手な日本人としてはどういった練習をすればいいのでしょうか。
リエゾンが起こっているところをとにかく繰り返し聞く、ドラマや映画の発音を真似る、洋楽の発音を真似するなど色々な方法が考えられます。どれもやって無駄ということはありません。
しかし、できるだけ効果的なトレーニングをということでオススメするとすればやはりシャドーイングです。シャドーイングとは、英語の音声が聞こえてきたあと0.5秒ほど遅れて追いかけて発音する方法。影のようについていくことからシャドーイングと呼ばれています。
発音を聞き、忠実に真似するためリスニング力の強化にも役立ち、正しい発音を身につけることができます。また発音だけでなく抑揚・強弱なども徹底的に体に覚えさせるため、リエゾンを習得するにはこのうえなく効果的なトレーニングといえるでしょう。
シャドーイングにはより効果を出すためのやり方や、注意点などもあります。下記のリンク先でシャドーイングについてと効果的なやり方についてまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、日本での英語学習におけるリエゾンの意味や種類などについて解説しました。
冒頭でも少し話しましたが、リエゾン=リンキングだと思っている人(間違っているというわけではないのですが)や、リンキングやリダクションについてはある程度知っていたけれど、それ以外は知らなかったという人には有意義な内容になっているかと思います。
繰り返しにはなりますが、リエゾンは正しい発音をしたいというだけではなく、ネイティブの人に自分の言いたいことを正しく伝えたいと思う人(ほぼ全ての人がそうだと思いますが)にとっては非常に重要で、必須と言っても過言ではないものです。
ただ単にネイティブっぽくてかっこいいとか、上級者がもっとネイティブに近づきたいと思ったときに必要なものでしょ、というのとは違うというのは本記事をちゃんと読んでいただいた人ならお分かりいただけることと思います。
日本人が苦手なリエゾン。だからこそこれを攻略することが英語が上達するための重要なポイントになりますし、本当に使える英語をマスターするためには避けて通れないものだということが理解できるのではないでしょうか。
あなたもぜひシャドーイングなどの練習方法を駆使して、リエゾンをマスターしてより世界に通用する英語を身につけてみてください。