英語の受動態を使いこなそう!「受け身」表現はなぜ、どんな場合に必要なのか
英語学習の中でも「難しい」とされている受動態。いわゆる「受け身」表現ですが、苦手意識を持っている人も多いようです。
この受動態ですが、英語だけに存在するわけではなく、もちろん日本語にも存在します。ですが英語の受動態の場合、日本語とは違う独特の表現になることがあるので混乱するわけです。
じゃあ受動態は使わなければいい…とは残念ながらなりません。受動態も英文法の中で大切な表現の1つですから、避けて通るわけにはいかないのです。
実は、受動態のルール自体はとても簡単。あとはそれと何が組み合わさるかのパターンを把握すれば、そこまで難しいことはないのです。
今回の記事で、英語の受動態(受け身)を苦手分野から得意分野へ変えてしまいましょう。
目次
英語の受動態(受け身)の基礎知識
英語の受動態(受け身)の基本は、先ほど話したように案外単純です。
「be+過去分詞」の形で「~される」という意味を表す動詞の用法が受動態です。
受動態の反対は、能動態です。受動態と能動態は書き換えが可能で、同じ意味の文章を両方で表すことができます。両者の違いは、「動作をする側」と「動作をされる側」の立ち位置の違いです。例を見てみましょう。
【能動態】She wrote the book.
(彼女はその本を書いた。)
【受動態】The book was written by her.
(その本は彼女によって書かれた。)
両方とも言っていることは同じなのですが、「行為をする側(彼女)」に着目するのか、「行為を受ける側(本)」に着目するかによってニュアンスが変わってくるのが分かりますね。
日本語だとあまり分からないかもしれませんが、英語では主語が非常に重要で「何が主役なのか」「何にスポットが当たっているのか」ということをとても重視するんですね。
では、なぜ受動態のように「動作を受ける対象(主語)が話題の中心になる言い方」をする必要があるのでしょうか。能動態じゃダメなの?と思う人もいるかもしれませんね。それでは次に、受動態を使う場面と、その必要性について考えていきましょう。
受動態を使う場面と必要性
受動態を使うのは、使う理由や必要性があるからです。まず分かりやすい例を挙げてみましょう。
①Kenji broke the door.
(ケンヂがドアを壊した)
②The door was broken by Kenji.
(ドアはケンヂによって壊された)
同じことを言っているようですが、これが誰かの質問に対する回答だとしたらどうでしょう。
「ケンジはいったい何をしたんだ?」や「ドアを壊したのは誰だ?」といった質問に対する答えであれば①が適切でしょうし、「このドアにいったい何が起こったんだ?」という質問であれば②が回答としてふさわしいでしょう。
受動態の場合は、動作をされる側(壊されたドア)に話題の焦点が当たっていますよね。「ケンヂが何をしたか」ではなく「このドアはいったいどうしたんだ」という話題であれば、受動態を使う方が自然というわけです。
「なぜこの文は受動態なのか」ということを考えるときは、「この文では何が強調されているのか」ということを考えると分かりやすいです。
それでは、「こういう場合は受動態が使われる」というシチュエーションを紹介していきましょう。
動作・行為を行った人が何者なのか明確でない場合
ある行為を行ったのが誰なのか明確でない場合は、その当事者を主語にできません(一応、「誰か」のように設定することはできますが…)。
例えば、大昔に建てられた建物などは誰が建てたか分かりませんよね。また不特定多数の人がしている行為などは、その行為を行っている人を明確にはできません。このような場合は受動態が使われることになります。
例を見てみましょう。
John was killed last night.
ジョンは昨夜殺された。
誰がジョンを殺したのか分からない場合、「誰かがジョンを昨夜殺した」というよりは「ジョンが殺された」という事実を主眼におき、上記のように受動態で表す方が自然となります。文末に「by ~」は付けません。
The book was written in 1928.
この本は1928年に書かれました。
上記では、その本を書いたのが誰か分からないのに加え、重要な情報は「何年に書かれたか」なので受動態になり、同じく文末に「by ~」は付けません。
また、不特定多数の人がその行為を行う場合も受動態が使われます。「普遍的な事実」を述べるときに使われることが多いですね。
Many stars can be seen at night.
夜には多くの星を見ることができる。
I am called Mai.
私はまいと呼ばれています。
上の文は受動態なので直訳すると「多くの星々は夜に見られることができる」ですが、意味合いとしては上記のような訳がしっくりきますね。
下の文は、特定の誰かというよりは多くの人に「まい」と呼ばれている場合ですね。特定の明確な行為者がいない場合は受動態がしっくりくるのが分かるでしょうか。
文章に客観性を持たせたい場合
客観的な文章とは、例えば下記のようなものです。
Japanese food is loved.
客観的に見て、日本料理が多くの人に愛されているという話題ですね。この場合、「多くの人が日本料理を愛している」というより、「日本料理は愛されている」という方が話に客観性を持たせられるのが分かるでしょうか。
このように具体的に誰が何を言ったのかを明らかにせず、一般的に広く知られている内容であれば受動態を使うのが一般的です。
話題の主役が決まっている場合
ひとつの文の中に登場人物が複数出てきてしまうことがあります。基本、主語は一人の人間であるのが普通なので、こういう場合にも受動態が役立ちます。
I was walking along the river and a stranger talked to me.
明らかに「私」が主語であるのに、途中から「知らない人(a stranger)」が登場してきて分かりづらくなっていますね。このような場合、主語を変えたくないので受動態を使います。
I was walking along the river and was talked to by a stranger.
これで主語はずっと「私」のままで、「知らない人に話しかけられた」という意味が伝わりますね。
言い方を柔らかくしたい場合(婉曲表現)
能動態だと言い方がキツく聞こえてしまう場合や、誰かを責めるようなニュアンスになってしまう場合、受動態を使って婉曲表現をするとソフトな言い方にすることができます。
You broke the window.
上記だと「お前が窓を割ったんだな」みたいなニュアンスになってしまいますが、
The window got broken.
こうすると誰がやったのかが隠され、ニュアンスをあえて曖昧にすることができます。
他にも下記のように学校側が生徒や保護者に指示を出すときなど、学校を主語にすると命令口調のようになって圧が強い感じになるところをソフトに伝えることもできますよ。
Students are encouraged to read this book.
(この本を読むことを勧めます)
Students are advised to study for an hour each day.
(毎日1時間勉強することを推奨します)
主語が長くなりすぎてしまう場合
主語が長くなりすぎてしまう場合とは、例えば以下のような文です。
Millions of people who want to communicate globally learn English.
上のように能動態で、「国際的にコミュニケーションを図りたい何百万もの人(主語)」が英語を学んでいます、とすると主語がいかんせん長すぎてバランスの悪い文章になってしまいますね。
この場合は受動態にする方が自然です。
English is learned by millions of people who want to communicate globally.
英語は国際的にコミュニケーションを図りたい何百万もの人によって学ばれています。
こうすれば主語が「英語」になってすっきりした文章になりますね。
受動態の時制について
受動態は時制によって多くのパターンに分けられます。ここがややこしいと思われる原因になっているのですが、基本「be動詞+過去分詞」というパターンは変わりません。ここさえブレずに把握しておけば、時制が変わっても対処することができるでしょう。
過去分詞についてと、be動詞が時制によってどう変化するかを把握していればどんな時制の受動態でも作れることになります。
過去形
過去形になると、「~された」という過去の出来事になります。「be動詞+過去分詞」という基本は変わらないので、「be動詞の過去形+過去分詞」という形にすればOK。
The window was broken(by him).
進行形
進行形になると、「~されているところ」という文脈になります。「be動詞+being+過去分詞」とすればOKです。
The baggage is being carried.
上の文だと「その荷物は(まさに今)運ばれているところだ」という意味になりますね。
完了形
受動態の完了形は「~されている」、「~されてしまった」という表現になります。現在完了形・過去完了形・未来完了形があり、それぞれ「have+been+過去分詞」「has+been+過去分詞」「had+been+過去分詞」です。
Some changes have been made.
(いくつかの変更が行われた)
Your dinner has been made by her.
あなたの夕食は彼女によって作られたところです。
My clothes had been made by me.
この服は私によって作られていた。
この辺は時制を理解していないとややこしいので、下記記事で時制について把握しておきましょう。
受動態の否定文について
受動態の否定文も簡単です。「be動詞+not+過去分詞」と、be動詞の後にnotを付けるだけでOK。
The bag was not broken by her.
そのバッグは彼女によって壊されていません。
受動態の疑問文について
受動態の疑問文の基本は、「be動詞+主語+過去分詞」となります。例文を見た方が早いでしょう。
Was the book bought by her?
その本は彼女によって買われましたか?
また「what」や「when」「where」「How」などの疑問詞を使った文は、「疑問詞+be動詞+主語+過去分詞」となります。
What was put on the table?
机の上に置かれているのは何ですか?
まとめ
今回は受動態がなぜ使われるのか、どういう場合に使われるのかを主題としてお送りしました。
漠然と「受動態は難しい…」とか苦手意識をもったままでいるより、「なぜ使うのか」「どういうときに使うのか」ということを理解していればより分かりやすいですし、実際に使う場合にも応用が利くはずです。
受動態に関しては、文法的にまだまだ応用的なルールや使い方があるのですが、それはまた別の機会にしましょう。とりあえずは「能動態から受動態にする方法」と「使われる理由・使う場面」を何となくでも把握しておけば、第一段階としてはOKです。